講義は、毎回さまざまなテーマを題材に、現代史を振り返ることにより、韓国の現在の社会・政治状況を検証しています。つまり、時系列に歴史を語るという形式ではないので韓国現代史のおおまかな流れを知らなければ少し混乱してします。また、韓国人を対象にしているため、韓国社会についての前提知識がなければ、始めは少し取っ付きにくいかもしれません。 たとえば、「運動圏」(民主・統一を求める在野勢力)、「日帝」(日本帝国主義)、「日帝強占時」(日本による殖民統治期)など聞きなれない言葉が出てきて戸惑います。 なお、「親日派」とは、「日帝強占時」に「日帝」に協力した韓国人のことを指します。日本や日本人に親近感を持っているかどうかを問題にしているのではないようです。この点について本書(24〜25ページ)では、次のように説明しています。
ただ、「日帝強占時」から、もう半世紀以上も経っているのですから、「親日派」のことも歴史上の過去の出来事と言っていいかもしれません。にもかかわらず、近年になって親日究明特別法が制定されるなど、なおわだかまりは捨てきれないようです。もっとも、日本でもA級戦犯をめぐる議論が時折復活(総理の靖国参拝がなくなってあまり話題にならなくなっていますが)するように、わだかまりは残っているのかもしれません。 なお、著者は、「運動圏」や進歩陣営(保守陣営と対立する政治勢力)に近い立場なので、金大中(キム・デジュン、김대중)・盧武鉉路線(特に盧武鉉)に共感する部分が多く、現在の李明博(イ・ミョンバク、이명박)政権には批判的です。 そして、本書は現体制に批判的な政治・社会評論集でもあり、その意味では現代の韓国社会を知るための貴重な手がかりを与えてくれます。 |