読書ノート / アジア史
 「創氏改名はなんだったのか」を問う

 創氏改名 日本の朝鮮支配の中で amazon
編・著者  水野直樹/著
出版社  岩波書店; 岩波新書版
出版年月  2008/3/19
ページ数  246 
判型  17.2 x 10.6 x 1.8 cm
税込定価  819円 
 否定的なレビューが多く、自虐史観による一面的な歴史書という印象だったので、買うまでもないと思い、図書館で借りて読んでみました。
 読んでみると、歴史観の違いはそれぞれあるとしても、近年のデータを踏まえた、客観的な記述による水準の高い歴史研究であることがわかりました。
 一般に、教科書では「創氏改名とは、日本式の姓名を名乗らせる皇民化政策」と説明されるが、筆者は、不明確で曖昧であるとして、必ずしも全面的にはそれを肯定していません。
 そもそも、創氏と改名は性格の異なる制度である。改名(ファーストネームの変更)は任意であり、裁判所の許可が必要で、しかも手数料も払わなければならない。実際の改名も10%程度であった。一方、創氏は、姓を氏に変更(これについて詳細な説明がありますが、具体的にどう違うのかよくわかりませんでした)する制度であり、届出は義務である。ただし、届出がない場合でも、一方的に、戸主の姓がそのまま氏とされる。その意味では100%強制的である(そもそも届出を義務とする必要もないと思いますが)。ただ、届出をする場合は、日本式の氏を選択することも許される。その意味では任意であり、朝鮮総督府は強制ではないと説明していた。筆者はそれに対して、公文書や新聞記事などの資料から、日本式の氏への強制があったと主張しています。貴族院でもその点で質疑があったそうです(219ページ)。
 実際に、日本式の氏を選択することを強制されたかどうかを具体的に立証することは困難だが、届出開始の2月は、累積件数わずか0.4%、3月でも1.5%だったのが、7月53.7%、最後の8月で80.3%と急増している(64ページ)ところを見ると、全くの任意であったと見るのは不自然であるように思われます。(もちろん届出のすべてが、日本式の氏を選択したわけではないでしょうが)
 ある地区のデータによると、内地人風の創氏は37%に過ぎず、朝鮮的な氏がかなりあった(152ページ)ことから、「日本式の姓名を名乗らせる皇民化」がどれほどの効果があったのか疑問だと思います。さらに、改名はごくわずかだから、日本式の氏を選択しても、その多くには朝鮮的な名がくっつくことになり、かなり支離滅裂な観があります。また、日本式の氏への誘導が、天皇への忠誠に直結したかどうかは疑問で、いたずらに民族感情を刺激し、治安悪化の懸念を高めただけとするなら、警察当局や内地政治家の強制反対の主張も理解できます。
 筆者が最後に提起している「創氏改名はなんだったのか」という問いかけは、とても意味深いものだと思います。
 アマゾンのカスタマーレビューへの投稿の再録です。一時期、否定的なレビュー(特定の歴史認識を共有するグループからの狙い撃ち?)が多かったので、それに対する反論を意識した書き出しとなっています。
  (2011/12/15)