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 保証人不要の落とし穴
 2023/10/22
 賃貸マンションでは、保証人不要の部屋が増えています。 
【SUUMO】で、広さ40m2以上の鉄筋マンションの部屋で、保証人不要がどれぐらいあるか調べてみると、次のようになりました。
人口 賃貸物件 保証人不要
札幌  195.2万 42,460 19,131 45%
横浜 372.5万 22,218 12,296 55%
名古屋 229.6万 80,670 33,707 42%
神戸 153.7万 41,426 4,804 12%
福岡 153.9万 22,441 3,475 15%
姫路 53.6万 12,007 4,990 42%
松山 51.5万 13,026 5,174 40%
 東日本では、半数前後が保証人不要であるのに対し、西日本では10%少しにとどまっています。ただし、50万人都市である姫路と松山では、40%ほどが保証人不要です。
 保証人不要の場合は、保証会社の利用が必要となります。
 保証会社は、家賃の滞納があった場合に、代わって家賃を支払い、賃借人に求償するので、連帯保証人の代わりとなるものです。賃借人は、保証会社に保証料を支払います。保証料の支払いは一括方式、月払い方式など様々ですが、2年間で家賃の半月から1月分ぐらいのようです。
 ただし、なかには悪質な保証会社もあるので注意が必要です。
 よくあるのは、緊急連絡先を保証人の代用としようとするものです。
 緊急連絡先には法的に明確な定義はありません。一般的理解では、急病や事故で本人が意思表示できないときや、事件や災害で行方不明の場合などの緊急時に連絡する相手先のことです。
 しかし、法的に明確な定義はないので、一般常識を超えた拡大解釈も可能です。緊急連絡先の欄に署名捺印したら、滞納した家賃を支払うよう弁護士事務所から催促状が届いたという話もあります(法律相談 |  保証人ではなく緊急連絡先にしただけなのに息子の債務の督促状がとどきました。)もちろん、連帯保証人でなければ、支払う義務はありませんが、相手が素人だと思って、悪質な請求をする弁護士もいるようです。
 また、狡猾な手段で、個人情報を収集する業者もあります。
 賃貸住宅の仲介会社では、申込受付くんを通じて審査請求するところもあります。このシステムでは、希望の部屋が決まったら、メールまたはSMSが送られてきて、そこに記載されたURLをクリックすると、賃貸借申込の画面に誘導されます。1ページ目は次のようになっています。

 このページの1番下に次のような項目があります。「同意する」にチェックを入れないと次へ進めませんから、エネチェンジによる個人情報収集と、収集した個人情報の提携先企業への提供に強制的に同意させられることになります。このエネチェンジは、あまり評判の良くない企業のようです(エネチェンジの口コミ・評判 | みん評)。
 緊急連絡先では、生年月日、続柄、携帯番号の記載も要求されます。携帯番号の記載は必須です。

 さらに、緊急連絡先の勤務先名、勤務先電話番号の記載も必須です。

 連帯保証人は、任意となっているので、空欄のままでも次へ進めます。そもそも、保証会社は、連帯保証人の代わりとなるものですから、連帯保証人の欄があるのが不可解です。連帯保証人と保証会社の両方を要求するような大家・管理会社の賃貸住宅は、あえて借りることはないと思います。ほかに部屋はいくらでも空いてますから。

 makes 100年不動産ナビ申込受付くん操作マニュアルでは、次のような注意事項を掲載しています。

 しかし、緊急連絡先には、何ら法的責任はなく、そもそも審査の対象ではないのですから、連絡を入れる必要も権利もないはずです。連帯保証人の代用をさせるため、心理的圧力をかけるのが狙いなのでしょうか。さらに問題なのは、緊急連絡先の生年月日や携帯番号など重要な個人情報を怪しげな業者に収集されてしまう可能性があることです。特殊詐欺防止の観点から問題があり、身内に思わぬ迷惑をかけてしまう恐れもあります。組織的な情報提供がなくても、ニュースで頻繁に報じられているように、顧客情報は不正流出するものという前提に立った方が良さそうです。
 また、審査が終了しても、保証会社を利用できるようになるというだけであって、賃貸借契約が成立するわけではありません。「キャンセルを受け付けない」と言っても、本人が契約しなければどうしようもないはずです。
 オリコフォレントインシュアはオリックス系列の信販系保証会社ですが、申込書には次のように、緊急連絡先の生年月日を記載するようになっています(エステイター株式会社申込書)。

 「生年月日は、反社会的勢力データーベースへの照合に必要な情報となりますので正確なご記載をお願い致します」とあります。緊急連絡先も反社会的勢力データーベースへ照合するという意味でしょうか。

 以上のように、保証会社利用には様々の問題があるようなので、いっそ保証人を立ててしまう方が良いかもしれません。ただ、短期で転居するつもりであれば、それも面倒です。
 そこで、2年分の家賃を先払いするという方法もありうると思います。保証人を要求するのは、主に家賃の滞納が心配だからであって、家賃を一括して先払いするのであれば、保証人も必要ないはずです。
 仲介業者にも、「非常に合理的」「弊社でしたら前向きに検討したい」「当社も扱った事はございます」というところはあります(家賃先払いで入居は可能?保証人がいないのですが…)。
 なお、「物件の所有会社が提携しているクレジットカード会社を利用することで、保証人が不要になるというケース」もあるそうですが(【ホームズ】保証人不要の賃貸物件のメリットとデメリットと保証会社の仕組み | 住まいのお役立ち情報)、その場合でも、保証会社の利用が条件になっていれば、単に決済手数料が上乗せられるだけになる恐れもあります。