●まさに、ガチガチの縛り 次のように、当初はコピーワンスという「規制」でしたが、2008年7月からは、より緩和された内容のダビング10も追加されています(よくわかるダビング10| BUFFALO バッファロー)。なお、コピーは元データが残りますが、ムーブ(移動)では、元データは残りません。また、ハードディスクからハードディスクへのコピーや移動はできません。 IODATAのPC用TVチューナー「GV-MVP/AZ」には、次のような説明があります。
IODATAの「GV-MVP/AZ」とPLEXの「PX-W3U4」を比べると次のようになります。なお、「PX-W3U4」の旧製品は12,000円前後でした。
●コピーワンスとB-CASは直接の関係はない コピーワンスの仕組みは次のようになっています(kenのムービー計画<用語説明>「CPRM、AACS、AVCREC」)。 録画もコピーに含まれるので、「一度しかコピーできない」コピーワンスでは録画データはコピーできないことになります。ただし、ブルーレイ・DVDレコーダーに内蔵されているHDDに録画したデータは、ブルーレイやDVDにムーブはできます(元のデータは消去されます)。 コピーワンスなどのコピー制御信号(CCI)は、放送電波に乗って送られてきます。ブルーレイ・DVDレコーダーでHDDに録画するとき、CCIを「ノーモアコピー」に書き換えるので、ムーブしかできなくなります。ブルーレイやDVDにムーブした録画データは、CPRMやAACSなどのコピープロテクトがかかるので、それ以上はコピーできなくなります。 ダビング10では、8回目のコピーまでは、元のデータはコピーワンスのままです。9回目のコピーでノーモアコピーに書き換えられるので、10回目はムーブしかできなくなり、元のデータは消去されます。 以上の処理は、ブルーレイ・DVDレコーダーのプログラムで行われます。したがって、B-CASカードによるスクランブル解除とは直接の関係はありません。ただし、後述するように、B-CASは、このようなコピー「規制」を、より確実にする役割を果たしています。 ●B-CAS、本来は有料放送のためのもの B-CAS社のページ のデータからB-CASカードの沿革をまとめてみました。
株主は、NHK、BS民放各社、WOWOW、スター・チャンネル、東芝、パナソニック、日立です。 NHKが出資したのは、設置確認メッセージ表示システムを利用するためです。NHKのBSデジタル放送を受信すると画面に設置確認メッセージが表示されます。メッセージを消去するためには、NHKに名前、住所、B-CASカード番号を登録しなければなりません。NHKと契約していなければ、この登録情報に基づいて契約を求められます。契約を拒否しても、「設置者に承諾の意思表示を命じる判決」が出れば、契約は成立します(最高裁大法廷,放送法の受信料制度を合憲と判断)。 一方、これとは別に「故障時の交換や紛失・盗難時の再発行など」を名目に、B-CASカードのユーザー登録を促していましたが、ユーザーからの反発を招いていました。さらに、2003年に個人情報保護法が成立したこともあり、2004年からは、「登録は任意(お願い事項)」となり((株)B-CASにおける 「個人情報保護」について)、2011年に廃止されています。 ●無料放送にスクランブル?! 2003年12月の地上デジタル放送開始直前、NHKと民放連が突然、「2004年4月から、すべてのデジタル放送にコピーワンスを導入する」と発表しました(地上デジタル/BSデジタルの全番組が来春よりコピーワンスに)。 しかし、著作権法にはコピーワンスなどという規定はありません。「私的使用のための複製」(著作権法第30条)には、回数制限はありません。したがって、コピーワンスは業界団体の申し合わせに過ぎませんから、それを無視した録画機を製造しても、法的は何の問題もありません。 そこで、業界団体の申し合わせに従わせるため、「無料放送にスクランブルをかける」という奇策が登場します。 その方法は、無料放送にスクランブルをかけ、B-CASカードがなければ視聴できないようにした上で、申し合わせに従わない録画機のメーカーには、B-CASカードを支給しないというものです(地上デジタルテレビ放送コンテンツ保護方式に係るDpa認定について)。 2002年6月の総務省令改正で、無料放送にスクランブルがかけることができるようになり、2004年4月から、実際にスクランブルがかけられました。そして、2000年12月、BSデジタル放送が始まったときは、無料放送にスクランブルをかけることは想定しておらず、200万台の受信機のB-CASカードには暗号解除鍵がなかったので、放送波を使ったアップデートの形で対応したということですから( B-CAS社の透明化に努めます)、まさに泥縄式のドタバタ劇だったわけです。 総務省のデータによると、米国、フランス、韓国のいずれにおいても、デジタル放送におけるコピー制御は存在しないということです( コンテンツの利用に係る諸外国の動向等)。日本でも、業界の申し合わせによりコピーが制限されているだけで、著作権法はコピーの自由を認めています。 ●B-CASカード書き換えは犯罪行為 ユーザーの「コピーの自由」への渇望は、次のように、さまざまのビジネスを産み出しました。
FriioやPT1などのパソコン用テレビチューナーは、単なるデジタルチューナーです。ユーザーが、ICカードリーダーで、B-CASの解除キーを読み取り、無料放送のスクランブルを解除し「業界の申し合わせ」を無視しているだけなので現行法には触れません。ただし、シュリンクラップ契約(一方的に押し付けられた契約)違反にはなります(B-CASカード使用許諾契約約款参照)。 リッピングソフトは、DVDやブルーレイディスクのコピープロテクトを外すのに使います。ユーザーが自分でかけたプロテクトを外すのは法に触れるのか、疑問もありますが、いずれにしてもリッピングソフトを使うだけなら、罰則はありません。 以上に対し、B-CASカードを書き換えて、WOWOWやスカパー!をタダで見るのは、犯罪行為として処罰されています。 行為と罰条は次のとおりです。
●B-CASカードは、いずれなくなる? 2018年12月から、ACASという新しいCAS方式が始まっています。新方式は、4K8Kテレビに採用されている方式で、ACASチップが内蔵されています。一方、2KテレビではB-CASカード方式が存続し、両者は当分併用されます( 新たなCAS機能に関する検討分科会(第4回)配布資料/一次とりまとめ(案))。 2012年、「平成の龍馬」というブログでB-CASカードを書き換える方法が紹介され、B-CASシステムの欠陥が明らかとなりました。 その後、対策が施されているようですが、それも次々と破られ、不正にB-CASカードを書き換えたとして摘発された、という事件が最近でもマスコミで報じられています。根本的な対策が困難ということになれば、B-CASカードは、いずれなくなるのでしょうか。 単に、コピー「規制」を回避するにとどまらず、B-CASカードを書き換え、有料放送をタダで見るというのは、犯罪行為だと思います。 しかし、全視聴者にB-CASカード使用を強制し、しかも欠陥カードを配布したB-CAS社にも、犯罪を誘発した責任はあるのではないでしょうか。 |