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 もし小選挙区比例代表併用制だったなら
2013/7/4(2020/7/7改定)
●問題の多い小選挙区比例代表並立制
 2012年の衆院選の結果は次のようになっています。自民党は比例代表では30%以下の支持しかなかったのに、全体の6割近い議席を占めました。小選挙区で自公ががっちりスクラムを組んだのが大きく効いています。公明党は比例区では711万票があったのに、小選挙区では88万票しかありません。600万票以上が自民党に流れたことになります。しかも、その88万票で小選挙区で9人を当選させています。いかに効率よく票を割り振ったかが分かります。
 小選挙区比例代表併用制は、実に自公スクラムに都合のよい制度であることが分かります。それでも、比例代表があるため、中小政党は議席を得ることができています。民主党も比例代表のおかげでようやく第2党の面目を保っています。にもかかわらず、その比例代表の定数削減を主張しているのですから、民主党執行部はいったい何を考えているのでしょうか。
2012年衆院選
小選挙区    比例代表   
得票数 得票率 当選者 議席率 得票数 得票率 当選者 議席率
自民 25,643,309 43.0% 237 79.0% 16,624,457 27.6% 57 31.7%
民主 13,598,773 22.8% 27 9.0% 9,628,653 15.9% 30 16.7%
維新 6,942,353 11.6% 14 4.7% 12,262,228 20.3% 40 22.2%
共産 4,700,289 7.8% 0 0% 3,689,159 6.1% 8 4.4%
未来 2,992,365 5.0% 2 0.7% 3,423,915 5.6% 7 3.9%
みんな 2,807,244 4.7% 4 1.3% 5,245,586 8.7% 14 7.8%
公明 885,881 1.4% 9 3% 7,116,474 11.8% 22 12.2%

●まさに千載一遇のチャンスだった 
 このままでは、いびつな形でしか民意を反映していない自公政権が当分続きそうです。
 今となって考えて見ると、民主党が、2009年総選挙で大勝した後にやるべきだったのは、ドイツ型の小選挙区比例代表併用制導入だったのではないでしょうか。
 ドイツ下院で採用されている小選挙区比例代表併用制は、小選挙区制を併用するものの実質的には比例代表制の選挙制度です。全598議席のうち299議席は小選挙区に割り当てられています。有権者は小選挙区と比例代表の2票を投票します。ただし、全598議席は比例代表の得票率に従って割り当てられます。では、小選挙区は何のためにあるかといえば、まず小選挙区当選者は党の名簿と関係なく優先的に議席を獲得します。さらに、比例代表の得票率に従って割り当てられた議席より多くの小選挙区当選者を出せば、その超過分の議席も獲得できます。そして、その超過分は総議席数598に加算されます。つまり、議員定数は選挙ごとに変動します(小選挙区比例代表併用制の問題点参照)。
 もし、日本でこの制度が採用されていたとしたら、昨年の衆院選の結果はどうなっていたでしょうか。総議席数600、小選挙区300として試算すると次のようになります。自民党は、比例代表の得票率に従って割り当てられた165議席より72議席多い237議席を小選挙区で獲得しているので、その超過分72議席が加算されます。その結果、衆院の議員定数は672議席となります。
 自民党は、小選挙区で大勝したからといって、全議席の3分の1強を占めているにとどまっています。過半数を占めるためには、自公以外の政党と連立する必要があります。参院を度外視すれば、いっそ、自維み連立の方がすっきりするかもしれません(維新失速でその可能性は薄れましたが)。公明党も、政策の隔たりが大きい自民党とスクラムを組む必要はありません。まさに、ドラスティックに政界が動く可能性が出てきて、国民の政治への関心は高まるものと期待できそうです。さらに、各党の当選者は小選挙区の得票数の多い方から決めるとでもしておけば、小選挙区の有権者が多い方が候補者にとって有利となるのですから、1票の格差も自然と解消されるでしょう。 
 民主党のみならず日本国民は、合理的な選挙制度を導入するための、まさに千載一遇のチャンスを逃したといえそうです。
2012年衆院選が小選挙区比例代表併用制だったらこうなる 
比例代表   小選挙区 最終結果 
得票数 得票率 当選者 当選者 議席数 議席率
自民党 16,624,457 27.6% 165 237 237 35.3%
民主党 9,628,653 15.9% 100 27 100 14.9%
維新の会 12,262,228 20.3% 122 14 122 18.2%
共産党 3,689,159 6.1% 37 0 37 5.5%
未来の党 3,423,915 5.6% 34 2 34 5.1%
みんなの党 5,245,586 8.7% 52 4 52 7.7%
公明党 7,116,474 11.8% 71 9 71 10.6%

2017年衆院選では、与党はかろうじて過半数維持
 総務省選挙関連資料のデータを元に、ドイツ型の小選挙区比例代表併用制を採用したとすれば、2017年衆院選の結果はどうなるか試算してみました。
 現行制度では、自民党は小選挙区で5割弱の得票にもかかわらず、75%の議席を獲得しています。一方、比例代表では、自公の与党議席は過半数を下回っています。
2017年衆院選
小選挙区(289)    比例代表(176)   
得票数 得票率 当選者 議席率 得票数 得票率 当選者 議席率
自民 26,500,777 47.8% 218 75.4% 18,555,717 33.3% 66 37.5%
立憲 4,726,326 8.5% 18 6.2% 11,084,890 19.9% 37 21.0%
希望 11,437,602 20.6% 18 6.2% 9,677,524 17.4% 32 18.2%
公明 832,453 1.5% 8 2.8% 6,977,712 12.5% 21 11.9%
共産 4,998,932 9.0% 1 0.3% 4,404,081 7.9% 11 6.2%
維新 1,765,053 3.2% 3 1.0% 3,387,097 6.1% 8 4.5%
社民 634,770 1.2% 1 0.3% 941,324 1.7% 1 0.6%
無所属     22          
 ドイツ型の小選挙区比例代表併用制を採用したとすれば、比例代表では自民の議席は155ですが、小選挙区で218議席を獲得しているので、超過した63議席がプラスされ、全議席も528となります。その結果、与党はかろうじて過半数を維持できることとなります。
2017年衆院選が小選挙区比例代表併用制だったらこうなる 
比例代表   小選挙区 最終結果(528) 
得票数 得票率 当選者 当選者 議席数 議席率
自民 18,555,717 33.3% 155 218 218 41.3%
立憲 11,084,890 19.9% 93 18 93 17.6%
希望 9,677,524 17.4% 81 18 81 15.3%
公明 6,977,712 12.5% 58 8 58 11.0%
共産 4,404,081 7.9% 37 1 37 7.0%
維新 3,387,097 6.1% 28 3 28 5.3%
社民 941,324 1.7% 8 1 8 1.5%