●4台に1台はWindows 7のまま マイナビニュースによると、2019年1月には、Windows 7 の占有率は37.2%ありました(Windowsが増加 - 1月OSシェア )。 ところが、2019年11月には、26.86%と10ポイント近く下がりました( Windows 7、サポート終了迫るも26.86% -11月OSシェア)。サポート終了を控え、Windows10への乗換えが進んだものと思われます。それと呼応するように、2019年のPCの出荷台数は過去最高だったそうです(2019年の国内PC出荷台数は1570万台 2020年は1157.5万台に減少か――MM総研)。 しかし、サポートが終了した2020年1月は、25.6%とほとんど下がっていません(PCの4台に1台はWindows 7のまま - 1月OSシェア)。 2020年5月は、24.3%と4ヶ月で1.3ポイントの下落です( Linuxが2年間で最高のシェア - 5月デスクトップOS)。「サポート終了後も使い続けたらとんでもないことになるぞ」という脅しに屈しなかった人が、これだけいるというのは、心強い限りです。もっとも、パソコンが壊れたら乗り換えるほかないので、「とんでもないこと」が起こらないまま、Windows 7 の占有率は徐々に低下して行くものと思われます。 ●現在、稼動しているパソコンは6500万台? JEITA(電子情報技術産業協会)のデータでは、パーソナルコンピュータの国内出荷実績は次のようになっています(単位は1000台)。
内閣府の消費動向調査によると、パソコンの買い替え年数は、年々伸びる傾向にあり、最近では7年となっているそうです(パソコンの買い替え年数をグラフ化してみる(最新))。 買い替え理由の7割近くは故障だそうです。 過去7年間のパソコンの累計出荷台数は6500台弱です。中古品として再利用されることを無視すれば、稼動しているパソコンは6500万台で推移することになります。そのうち4台に1台、つまり1600万台ほどは、Windows 7のままだということになります。 ●Windows XP の時よりも事態は深刻 サポートが終了したWindows が使い続けられているという前例は過去にもありました。それは、Windows XP です。Windows XP は、2014年4月にサポートが終了しました。3月には20%ほどあったシェアは、5月には10%弱に減少しました。その後も漸減しながらも使い続けられています(パソコンやマザーボード出荷数が減少する7つの理由 )。サポートが終了したにもかかわらず、Windows 7 がなおも25%近いシェアを維持しているのですから、事態はより深刻です。 Windows XP パソコンは、2010年10月に販売を終了していますが(ついに「Windows XP」を搭載したパソコンが販売終了へ)、その時点で、Windows XP は、次の表( Windows XPのシェアが60%を下回る、10月OSシェア)が示すように、なお(Windows 以外の全パソコンを含め)6割近くのシェアを維持していました。
●バージョンアップは失敗の繰り返し 複数のWindows が出回り、古いバージョンの方が人気があるというのはどうしてでしょうか。 一般向けの本格的なOSとしてのWindows の歴史は、95 から始まり、インターネットの普及( 日本におけるインターネットの歴史)に伴って、急成長しました。そして、次のように、大きく5回のバージョンアップが繰り返されて来ました。 このうち、及第点を与えられるのは、XP と 7 ぐらいで、Vista と 8 は完全な失敗作です。8.1 と 10 は、単に使いにくい 7 に過ぎません。まさに、バージョンアップは失敗の繰り返しだったといっていいでしょう。なお、Windows 10 にもサポート終了はあるそうです(Windows ライフサイクルのファクト シート)。
XP は、2001年10月に発売されました。後継バージョンとして、Vista が、2007年1月に発売されましたが、これが、「重くて遅い」と不評でした(中古の東芝dynabookにリカバリーディスクが付いていたので実際にインストールしてみましたが、OSの起動速度やFirefoxの反応などは、Windows 7 とさほど変わらないようには感じました。ただし、ネット動画は再生できないし、ディスクのフォーマットには恐ろしく時間がかかりました)。そして、2009年10月に Windows 7 が投入され、徐々にシェアを拡大して行きました(Vista 発売から3年足らずで 7 が発売されたということは、やはり、Vista には重大な欠陥があったのだと思われます)。 2012年10月には、7 の後継バージョンとして、 8 が発売されましたが、これは、Windows Phone の宣伝版(マイクロソフトは結局、この分野からは撤退しました)とでもいえるもので、「スタートメニューがないので、シャットダウンや再起動ができない」というとんでもない代物でした。そこで、2013年10月に 8.1 が提供され、スタートメニューが復活しました。しかし、サポート終了目前の XP にも負けるという体たらくでした。 2015年7月に、8.1 の後継バージョンとして、 10 が発売されましたが、ここでマイクロソフトは、無償アップグレードという奇策に打って出ます。この時点で、7 は7割ほどのシェアを維持していましたが、 2016年7月の無償アップグレード終了時には、 シェアは5割程度にに下がり、10 が10ポイント差まで迫りました。それは、7割以上のユーザーが「ただでもアップグレードしたくない」と考えたということも意味します。 ●なぜ、 Windows 10 は嫌われるのか では、Windows 10 は、なぜそれほど嫌われるのでしょうか。 その理由は、個人情報収集とソフト流通の管理強化にあると思われます。 個人情報収集という点では、いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の方が徹底しています(GAFAに不満爆発 勝手に吸い上げられる個人情報……)。 グーグルは検索エンジンやアンドロイドのアカウント情報(Googleに魂を売らずにAndroidを使う方法)を通じて膨大な個人情報を収集しています。アップルは「個人情報を商売にしない」(ジョブズ時代から「個人情報で商売しない」を掲げてきたAppleのブレなさ)そうですが、iPhoneなどを通じて膨大な情報を収集していることは事実です(Appleが収集するユーザーの個人情報はどんなものなのか?開示請求してみたらこうなった、という記録)。 フェイスブックの資産価値は実名主義で集めた膨大な個人情報データにあります。アマゾンは宅配を通じて膨大な個人データを収集できます。 マイクロソフトは、Windows 8 から露骨に個人情報を収集するようになりました。インストールの際に、メールアドレス、パスワード、名前、郵便番号、生年月日、携帯電話番号・携帯メールアドレスまで求められ(Windows8を新規クリーンインストールする手順)、面食らいました。Windows 10では、(無視しても構いませんが)本人確認を行う必要があります(NEC LAVIE公式サイト)。 ソフト流通の管理強化もWindows 8 から始まりました。 パソコンの有償ソフトは、店頭やネット通販を通じて購入するのが普通です。一方、無償ソフトは製作者のサイトや、ベクターや窓の杜などを通じて流通しています。多くの無償ソフトは、インストールの必要がありません。 マイクロソフトは、Windows 8 発売と同時に、Windows ストア(現在はMicrosoft Store)を開設しました。Windows 8 の「スタート画面」には、「Windows ストア アプリ」が並んでいます。この「アプリ」は、「Windows ストア」(赤線で囲んだ部分)を通じてしかインストールできません(使える無料アプリがたくさん!Windows ストアを使ってみよう)。 スマートフォンでは、ソフト(アプリ)の流通は、App Store や Google Play を通じて、Apple や Google が独占していますが、マイクロソフトは、それをパソコン分野で実現しようとしているのです。さらに、UWPアプリを通じてスマートフォンを含めたアプリ流通市場を支配しようと目論見ましたが(Microsoft Storeのアプリは今までと何が違う?)、 Windows Phone が全然売れないので、空振りに終わりました(MicrosoftがWindows 10 Mobileのサポート終了をアナウンス )。 ソフトの流通市場を独占したいマイクロソフトとしては、「Windows ストア アプリ」以外のソフトは使えないようにしたいというのが本音だと思います(Win32からUWPへ――、アプリケーションの移行を進めるMicrosoft)。しかし、そうなると従来からのWindows ユーザーにとって、Windows を使う意味はなくなります。 ●当分は Windows 7 を使い続けられそう 独占的地位を利用して、支配強化を進めるマイクロソフトに対抗するためには、Windows 7 を使い続けるというのも有効な手段ですが、新規に入手することは難しそうです。 Windows 7 搭載パソコンは、2016年10月に販売を終了し、企業向けのダウングレードパソコンも2018年10月に販売を終了しました(Win7搭載PC、10月で出荷終了 購入は得策にあらず)。 Windows 7 のパッケージ版やDSP版を持っていても(プロダクト キーを持っていれば、ISO ファイルをダウンロードできます)、「第7世代Coreプロセッサ(Kaby Lake)およびRyzen以降のプラットフォームは、Windows 7に対するサポートがなく、基本的にWindows 10しか使えない」( Coffee LakeでWindows 7が使える? ColorfulのIntel H310“C”マザー)ということです。 ただし、ほとんどのAMDマザーボードで、Windows 7 をインストールできるようです(Ryzen で Windows7 をインストール)。また、biostarでは、Windows 7 x86/x64対応のマザーボードを販売しています。したがって、当分は Windows 7 を使い続けられそうです。 ●いずれにしても安全対策は必須 マイクロソフトは「余裕を持った準備を」と呼びかけ(OS にはサポート期限があります!)、ネット上ではそれに呼応するかのように、「Windows 7には、もうそろそろ見切りを付けた方が得策」( 迫る「Windows 7サポート終了」、そのとき起こる困りごととは?)とキャンペーンが繰り広げられました。 その根拠は次のようなものです。ブルーの部分は私の反論です。
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