●まだ2割が Windows 7 Windows 7 のサポートは、2020年1月14日に終了し、シェアは次のように漸減しています(Operating system market share)。 しかし、2021年8月現在で、まだ2割を維持しています。 Windows 7 の搭載されたPCは、2016年10月で販売を終了しています。今でも、Windows 7 インストールの可能なマザーボード(例えばA10N-9830E)は販売されていますが、入手はかなり困難ですし、確実にインストールできる保証もありません。したがって、Windows 7 のシェアが今後増える要素はありません。サポートが終了しているのだから、Windows 7 離れが進むはずです。 にもかかわらず、シェアが2割を維持しているということは、サポートが終了しても、ユーザーは 、そのことを気にせず Windows 7 を使い続けているし、また特に問題は起こっていないものと推測されます。 ●「最後のWindows」ではなかった ITmediaは、Windows 10 について、次のように説明していました(Windows 10は最後のメジャーアップグレードになる?)。
ところが、このページの始めに紹介したように、「Windows 10 のサポートは2025年10月14日で終了」し、「Windows 11 を2021年10月5日より提供する」と、マイクロソフトは前言を翻しています。 この点について、PCWorldのMark Hachman氏は、「Windows 10は最後のWindows」という発言はデベロッパーエバンジェリストだったJerry Nixon氏によるもので、経営陣や広報担当者から出たものではないと、マイクロソフトを擁護しています( 「Windows 10は最後のWindows」という話は何だったのか)。 しかし、Jerry Nixon氏は「Windows 10は最後のバージョン」と明確に述べており、当時の広報担当者もその発言を否定することなく、「新たなイノベーションやアップデートをサービスとして継続的に配信し」「Windows 10は常に最新の状態に維持される」と述べているのだから、「サポートが終了することがない」という印象を(意図したかはともかく)ユーザーに与えたことは否定できないと思われます。 ●OSは壊れることはないが オペレーティングシステム(OS)は、ソフトウェア(プログラム)ですから、ハードディスクやマザーボードなどのハードウェアとは違って壊れるということはありません。ただし、部品が壊れ、修理に多額の費用を要するなどの理由で、パソコンを買い換えれば、OSも廃棄されることになります。また、CPUの性能向上やHDD・SSDの大容量化に伴い、OSが時代遅れになるということもあります。また、Microsoftがサポートを終了することにより、OSの買い替えを促すということもあります。 Windowsの各バージョンの発売時期とサポート終了時期は次のようになります。「販売終了」は、Windowsの搭載されたパソコンの販売終了時期です。パソコンの販売終了後も、OSとしてのWindowsは、小売店に在庫が残っていれば入手可能です。
●Windows95は次々バージョンアップ Windows95は、発売からサポート終了まで6年で、その間に、次のようにめまぐるしくバージョンアップを重ねました(Windowsの歴史 Windows 98、98SE、Me編:優れたOSを輩出したWindows 9x時代 - builder by ZDNet Japan)。 ●WindowsXPで一応完成 WindowsXPは、発売からサポート終了まで14年と長寿でした。家庭用のWindows 9x系OSと ビジネス用Windows NT系OSを統合して信頼性・安定性・操作性を大幅に改善したOSです(Windows XPとは - コトバンク )。操作性と機能性に関して試行錯誤を積み重ねた結果の完成形OSといえます。しかし、CPUの性能向上やHDD・SSDの大容量化、高速インターネットの登場により、次第に時代遅れのOSとなって行きました。 たとえば、32ビット版XPでは、2TB以上の大容量のHDDを認識できないという「2TBの壁」がありました。 ●やはりVistaは失敗作 そこで、大容量HDD、高速ネット動画配信などに対応すべく登場したのが、WindowsVistaですが、これは失敗作だったようです。3年足らずで、次期バージョンのWindows7が発売されました。 dynabook Satellite K32Vは、2009年に発売されたビジネスモデルのノートパソコンですが、次のようにプレインストールOSは、Vista か XP かどちらかを選べるようになっています。 私は、2013年にこの製品を中古で買いましたが(ネット通販/東芝 dynabook Satellite K32V 253E/W)、XP がインストールされていて、Vista のインストール用ディスクも付いていました。 Vista は恐ろしく不評だったようですが、実際はどうだったのかを確認するために、試しにインストールしてみました。パーティション作成やファイルのコピーにやたらと時間がかかり、忘れたころにようやくインストールが完了しました。起動はさほど遅くはありません。ブラウザは、サポートが終了しているらしく、Firefox以外はまともに反応しません。Firefoxでも動画は全く再生できません。Windows7では、問題なく再生できるので、Vista から7への改良で、プログラムの修正がなされたのかもしれません。また、HDDのフォーマットにも恐ろしく時間がかかります。 「WindowsXP が何とか動作する低スペックのPCに WindowsVista をインストールしたのが不評の原因」という趣旨のVista擁護論をインターネット上で見かけることがあります。 確かに、次のように、VistaはXPよりもハードウェアの要件は厳しくなっていました(このPCではWindows Vistaが動かない?)。しかし、上記のようにdynabook Satellite K32Vは、この要件をクリアしています。なお、中古で買った後、メモリーは4GBまで増強しています。
●「UEFI+GPT、64bit」が最終目標? Windowsのバージョンアップは、当初から「UEFI+GPT、64bit」に向かっていたようです。 UEFIとGPTの関係は次のとおりです(詳細はlegacy+MBR、32bit の Windows 7 で十分なのに参照)。
Vista・7では32ビット版でも、データ用ディスクのパーティションをGPT形式で作成することができるようになり、「2TBの壁」は解消されました。また、64ビット版では、システム用ディスクのパーティションをGPT形式で作成することができるようになり、システム用ディスクでも、2TBの制限はなくなりました。ただし、当時のマザーボードはUEFIに対応していませんでした。 Windows 8 が登場する頃に、ようやく、マザーボードがUEFIにも対応するようになりました。当時のマザーボードは、BIOSは、レガシーBIOSとUEFIのどちらかを選択できたので、UEFIに対応していない32ビット版のWindows 7 もインストールできました。 しかし、最近の(特にIntel対応の)マザーボードは、UEFI+GPTで64ビット版のWindows10しかインストールできないものがほとんどです。AMD対応のマザーボードには、64ビット版のWindows7をインストールできるものもあります。 したがって、市販のパソコンは64ビット版のWindows10搭載のものしかありません。Windows11も、64ビット版のみとなると思われます。 各バージョンごとのGPT形式でのパーティション作成の可否をまとめると次のようになります。システム用ディスクのパーティションをGPT形式で作成することができれば、UEFIでインストールできます。 いずれのバージョンでも、レガシーBIOSでインストールできますが、Windows11については、不明です。
●なぜ、強制アップグレード Windowsのいずれのバージョンでも、レガシーBIOSでインストールできますから、前述のように XP が搭載されていたdynabook Satellite K32Vにも、32ビット版のWindows10をインストールできます。 ところで、Windows10は、2015年7月29日の発売から1年後の2016年7月28日 まで、無償アップグレードを行いました。なぜ、突然このような大盤振る舞いを行ったのでしょうか。 Windows XP のシェアの推移が、このことに大きな影響を及ぼしたものと思われます。 Windows XP の搭載されたパソコンは、2010年10月に販売を終了しています。一方、後継のWindows Vista は、2007年1月に発売されたもののさっぱり売れず、Windows 7 が2009年10月に投入されました。 2010年10月に販売を終了したにもかかわらず、Windows XP は、2010年11月の時点で6割近いシェアを占めており、Windows 7 がトップの座を奪うのは、2012年8月になってからでした( 「Windows 7」、デスクトップOSシェアで「Windows XP」を抜く--8月のNet Applications調査)。 Windows 7 は、Windows XP と同じような軌跡をたどりつつありました。2012年10月に後継のWindows 8 が発売されたもののさっぱり振るわず、2013年10月に、マイナーチェンジしたWindows 8.1 が投入されましたが、サポート終了が迫ったWindows XP にも及ばないという体たらくでした。2014年4月にWindows XP のサポートが終了したことにより、ようやくWindows 8 が2位の座を奪ったものの、Windows 7 には遠く及ばない状態でした(パソコンやマザーボード出荷数が減少する7つの理由)。 2015年7月に、Windows 8 の後継のWindows 10 が発売されますが、このような状況に危機感を抱いたMicrosoftが、なりふり構わぬ無償アップグレードで、Windows 7 つぶしを図ったものと想像できます。 アップグレードは、当初は、予約と同意の2ステップで行っていましたが、そのうち予約だけで同意したことになりました( Windows 10への強制アップグレードをMicrosoftが明言、来年から実施)。 私のWindows 7 では、予約もしていないのに勝手に準備が行われ再起動待ちとなったように記憶しています。 2016年7月に無償アップグレードは終了し、10月にWindows 7 搭載のパソコンの販売も終了します。 Windows 10がWindows 7を抜いてシェア1位となった時期については、2018年1月とするもの(Windows 10、Windows 7を抜いてWindowsのシェア第1位に)と、2018年12月とするもの(デスクトップOSシェア、12月はNet ApplicationsでWindows 10が初の1位に)があります。 Windows 7 にしても、Windows XP にしても、販売を終了してから、シェア1位の座を譲り渡すまでに2年前後かかったことになります。 Windows 7 は、Windows 10 への無償アップグレードのため、シェアは大幅に減少した期間もありましたが、最終的な結果はあまり変わらなかったようです。 Windows XP は、サポート終了によりシェアを大きく減らしましたが、Windows 7 は、サポートが終了しても、さほどの影響はなく、まだ一定数のシェアを維持しています。 ●相当数の「レガシーBIOS Windows 10」 無償アップグレードにより、Windows 7 搭載パソコンの3割程度が、Windows 10 に乗り換えたものと推測されますが、その中には相当数の「レガシーBIOS Windows 10」が含まれているものと思われます。 Windows 10 は、UEFIモードを売りにしていますが、Windows 7 時代のマザーボードの多くは、UEFIに対応していませんでした。 また、そもそも、32ビット版のWindows 7 はUEFIに対応していないので、たとえマザーボードがUEFIに対応しているとしても、レガシーBIOSでインストールする外ありません。 マザーボードがUEFIに対応しているにもかかわらず、レガシーBIOSで Windows 7 がインストールされている場合でも、UEFIでアップグレードすることは可能です。しかし、そのためには、Windows 10 をクリーンインストールする必要があります。その手順は少し複雑なので、遠隔操作の強制アップグレードにより行うのは困難です。また、クリーンインストールすると、各種デバイスのドライバーがインストールされない可能性もあります(「回復」で壊れた「Jumper Ezpad 6 Pro」を修復参照)。 クリーンインストールの手順は次のようなものです。 メディア作成ツールをインストールし起動して、インストール メディアを作成します(無償アップグレードは終了していますが、現在でもWindows 10 のクリーンインストールは、メディア作成ツールを使って行えます )。 BIOSでインストール メディアのブート順位を1位にして再起動すると、インストール用のデータが読み込まれ、指示に従えば、新しいSSDやHDDにWindows をインストールすることができます。途中でプロダクト キーの入力を求められますが、入力しなくても、インストールはできますし、使い続けることはできます。ただし、認証を受けなければ、一部のアップデートが行えなくなるなどの機能制限を受けます。 今回のWindows 11 への無償アップグレードでも、メディア作成ツールが用意されるものと思われます。しかし、Windows 11 は、UEFI、セキュア ブート対応が要件となっているため(新しい Windows 11 OS へのアップグレード | Microsoft)、UEFIに対応していないマザーボードではアップグレードできません。その意味では、無償アップグレードによる世代交代の効果は、より限定的なものと思われます。 ●「もうやることがない」というのが実情? マイクロソフトの News Center Japan は、Windows 11 について、「11のハイライト」を挙げています(Windows 11、10 月 5 日より提供開始 - News Center Japan)。いずれも単なるデザイン変更か、従来からある機能の焼き直しに過ぎず、バージョンアップと呼べるほどの内容ではありません。OSとしての機能は、Windows 7 でほぼ完成しているので、それ以上は「もうやることがない」というのが実情ではないかと思われます。
パソコンの主な用途は「WEBサイトの閲覧」「メール」「ネットショッピング」「動画鑑賞」ですが、これらはWEBブラウザを通じて行います。したがって、最新のWEBブラウザに対応していれば、OSは、Windows 7 でも、Windows 10 でも、Chrome OS でも、さほど違いはありません。 「写真・映像の管理・編集」「資料・文書作成」は、アプリケーションソフトによって行います。バージョンアップした場合、新しいバージョンのWindowsで、従来のソフトが使えなくなる可能性があります。これこそが、今回のアップグレードの最大の懸案事項です。 SNSやゲームは、スマートフォンを使う方が多い思われます。「日本のゲーム市場に関しては、他の国と比べてPCゲームの市場が小さいのが特徴的」だそうです(【市場比較コラム】日本・アメリカ・中国・韓国における家庭用・モバイル・PCゲームの市場比較)。 Windows 11では、Androidアプリが利用できるというのが売りだそうですが(「Windows 11」10月5日登場、Androidアプリは当初非対応に)、スマホユーザーを取り込もうという発想は、Windows 8 のスタート画面と共通したものがあるようです。 なお、「すべてではないもののmacOSでもiOS/iPadOSアプリが動作可能になったのです」(iOSとiPadOS、macOSってどう違うの? - いまさら聞けないiPhoneのなぜ)ということです。 ●できるだけ長く使っていただく 前述のように、OSが壊れるということはありません。ただし、OSの組み込まれた機械が壊れれば、OSも廃棄されることになります。通常は、OSだけが別に販売されることはありません。OSが単体で販売されているのはWindows だけです。なお、LinuxやchromeOSは、無料で入手できます。 各種デバイスとOSの関係は次のようになっています。
Googleは、検索サービスを媒介とした広告を主な収入源とする企業です。また、メーカーにAndroidを無料で提供し、Androidの組み込まれたスマートフォンを広告媒体とすることによっても、利益を上げています。 Microsoftは、Windowsの成功で巨大企業に成長しましたが、現在では、収益の半分はクラウドサービスとオフィスソフトが占め、Windowsの割合は16.2%に過ぎません(Amazon・Microsoft・Alphabet・Apple・Facebookの収益源が何かをグラフで見比べてわかること - GIGAZINE)。スマートフォン分野には、Windows 10 Mobileで食い込みを図りましたが、失敗し撤退しています。 Microsoft の Windows には、サポートの終了がありますが、Apple の製品にも修理サービスや部品の提供期間があります。しかし、これはあくまでもハードウェアの問題であって、ソフトウェア(OS)に使用期限を設けているわけではありません。 Apple は自社の製品の耐用期間について、次のように述べています(保証期限の切れた Apple 製品の修理サービスを受ける)。「できるだけ長く使っていただく」ということは、デバイスが壊れるまでは使い続けることができるということ、つまり、OSには使用期限がないことを意味します。
製品を販売店に供給した最終日から最低5年間は、修理サービスや部品の提供を受けられる。5年以上7年未満については、在庫があれば提供を受けられる場合もある。7年以上が経過したら、提供はすべて終了する。
●サポートを終了しなくても、Windows は売れる 一方、Windows の場合は、Windows の組み込まれた製品の販売終了から4年ほどでサポートを終了しています。サポートを終了するというのは、アップデートしなくなるということですから、Windows を使えなくなるわけではありません。そもそも、Windows 7 では、次のように、アップデートしないという設定も可能でした。 今使っている32ビット版の Windows 7 では、「更新プログラムを自動的にインストールする(推奨)」にしてありますが、サポートが終了したはずなのに、いまだに更新が続いています。一方、64ビット版の Windows 7 の方は、更新ができなくなっています。 今回、「Windows 10 は最後のWindows」という前言を翻してまで、Windows 11 を発売する背景には、「サポートを終了しなければ、いつまでも Windows 10 を使い続けられてしまう」という危惧があったのかもしれません。 しかし、パソコンが壊れれば、Windows も廃棄されることになります。新しいパソコンを買えば、Windows はインストールされています。つまり、サポートを終了してもしなくても、Windows は売れるのです。 もちろん、サポートを終了することにより、旧バージョンのOSが賞味期限切れだという印象を与えれば、パソコンの買い替えを促す効果はあります。 しかし、パソコンは、部品が壊れても、取り替えれば寿命を延ばせます。個人的な体験から、パソコン部品の寿命の短いものから順に並べると、次のようになります。
SSDは平均4〜5年ぐらいの寿命で、その他の部品は相当長く使えますし、壊れれば交換すれば良いだけの話です。 結局、パソコンの寿命はマザーボードの寿命により決まりますが、10年以上使えるものもあると思います。dynabook Satellite K32Vは、2009年に発売されたノートパソコンですが、まだ動いてます。 OSに賞味期限を設けて、まだ十分に使える機械を廃棄させるような商法は、SDGsの観点からも見直すべき時期に来ているように思います。 さて、Windows 11 の次はあるのでしょうか。 |
|